近年、プロスポーツの世界では海外選手や外国人コーチの活躍が当たり前になっています。
日本のプロ野球では多くの外国人選手がプレーし、サッカーやバスケットボールでも海外出身の選手や指導者がチームに欠かせない存在となっています。また、日本人選手が海外リーグへ挑戦するケースも増えています。
こうした国際化が進むスポーツ界において重要な役割を担うのが「スポーツ通訳」です。
通訳と聞くと、国際会議や商談の場で活躍する姿をイメージする方も多いかもしれません。しかし、スポーツ通訳には一般的な通訳とは異なる専門性が求められます。
今回は、スポーツ通訳の仕事内容や一般的な通訳との違い、さらに競技ごとの特徴についてご紹介します。開催中のFIFA ワールド カップ 2026でも、もしかしたら通訳が注目される機会があるかもしれません。
スポーツ通訳と一般的な通訳の違い
一般的な通訳の主な役割は、会議や商談、研修などにおいて正確に情報を伝えることです。
一方、スポーツ通訳は単なる言語変換だけではなく、チーム運営や選手のパフォーマンス向上を支える役割も担っています。
例えば外国人選手が日本のチームへ加入した場合、
- 監督やコーチの指示を正確に伝える
- チームメイトとのコミュニケーションを支援する
- 練習メニューや戦術を説明する
- メディア取材をサポートする
- 日常生活の相談に対応する
といった業務が発生します。
つまりスポーツ通訳は、「言葉の橋渡し役」であると同時に、「チームの一員」として活動するケースが少なくありません。
時には選手の精神的な支えとなることもあり、一般的なビジネス通訳以上に人間関係の構築が重要になる職種と言えるでしょう。
スポーツ通訳ならではの仕事とは?
スポーツ通訳には、競技現場ならではの業務があります。
試合中・練習中の通訳
スポーツの現場では、一瞬の判断が勝敗を左右します。
監督やコーチからの指示を迅速かつ正確に伝える必要があり、長い説明をする時間はありません。
例えば、
「守備ラインを上げる」
「次はインサイドを使う」
「相手の左サイドを狙え」
といった戦術的な指示を即座に理解し、相手に伝える能力が求められます。
メディア対応
試合後のインタビューや記者会見も重要な仕事の一つです。
選手の発言を正確に伝えるだけでなく、競技特有の表現やニュアンスを理解して訳す必要があります。
特に海外メディアが参加する国際大会では、通訳の質が選手やチームの印象に大きな影響を与えることもあります。
生活サポート
外国人選手の場合、競技以外の場面でもサポートを行うことがあります。
- 住居探し
- 病院の受診
- 行政手続き
- 家族のサポート
など、異文化の中で生活する選手を支援するケースも少なくありません。
そのためスポーツ通訳には語学力だけでなく、ホスピタリティや調整力も求められます。
競技によって求められる通訳は違う
スポーツ通訳と一口に言っても、競技によって求められる知識やスキルは大きく異なります。
サッカー通訳
サッカーは試合中の流れが止まらないスポーツです。
監督やコーチからの指示も短く、瞬時に伝達する必要があります。
また、
- フォーメーション
- プレッシング
- ビルドアップ
- トランジション
など、戦術用語への理解も欠かせません。
さらに、海外クラブとの移籍交渉や国際大会での記者会見など、ビジネス的な場面での通訳が求められることもあります。
野球通訳
野球通訳は日本でも特に知名度の高い分野です。
メジャーリーグで活躍する日本人選手や、日本球界でプレーする外国人選手には専属通訳が付くことも珍しくありません。
野球通訳には、
- 配球
- 打撃理論
- 投球フォーム
- データ分析
など専門用語への理解が求められます。
また、試合数が多く移動も頻繁なため、選手と長時間行動を共にするケースが多いのも特徴です。
そのため、通訳でありながらマネージャーに近い役割を担うこともあります。
バスケットボール通訳
近年人気が高まっているバスケットボールでも、外国籍選手や海外出身コーチの存在は欠かせません。
バスケットボールはタイムアウトやハーフタイムで戦術指示が集中するため、
- スクリーン
- ピック&ロール
- ゾーンディフェンス
- トランジションオフェンス
といった専門用語を理解しながら、短時間で情報を伝える必要があります。
また、Bリーグでは地域密着型の活動も盛んなため、地域イベントやスポンサー対応など、競技以外の場面で通訳が活躍する機会も増えています。
スポーツのグローバル化と通訳の重要性
スポーツ界の国際化は今後もさらに進むと考えられています。
選手や指導者の国際的な移籍が活発になるだけでなく、海外リーグとの提携、国際大会の開催、グローバルスポンサーとの協業など、スポーツビジネスそのものがグローバル化しています。
そのなかで通訳は、単に言葉を変換する存在ではなく、人と人、チームとチーム、そして国と国をつなぐ重要な役割を担っています。
特にスポーツ通訳は、競技への深い理解と高いコミュニケーション能力の両方が求められる専門職です。
選手やチームが本来の力を発揮できる環境を支える存在として、その重要性は今後ますます高まっていくでしょう。
まとめ
スポーツ通訳は、一般的なビジネス通訳とは異なり、競技知識やチームとの信頼関係が求められる専門性の高い仕事です。
サッカー、野球、バスケットボールなど、競技ごとに必要な知識や役割は異なりますが、共通しているのは「言葉だけでなく、人と人をつなぐ存在」であることです。
スポーツのグローバル化が進む現代において、スポーツ通訳は選手やチームの成功を支える重要なパートナーとして、ますます注目される存在になっています。
田中達大(マーケティング担当)
2020年カルテモ入社。翻訳コーディネーションを4年ほど担当し、現在は通訳・人材事業、営業、マーケティングを担当。前職は旅行会社にて中南米地域を扱う。中南米のほとんどの国を訪れたことが自慢。