ソニー・ホンダモビリティ「AFEELA」が描いた夢と、グローバル戦略における翻訳の難しさ

こんにちは、マーケティング担当の田中達大です。

連載コラム第2弾として、今回はソニーとホンダが開発を進めてきたEVの話題から、これからの時代に翻訳に求められることを考えてみました。

ソニー・ホンダモビリティ「AFEELA」が描いた夢と、グローバル戦略における翻訳の難しさ

日々、多くのお客様から翻訳のご依頼やご相談をいただく中で、翻訳会社である私たちが注視しているのが「日本企業がいかにして世界に挑み、どのような壁に直面しているか」というニュースです。

先日も非常に衝撃的なニュースが飛び込んできました。ソニーグループとホンダがタッグを組んだ合弁会社、ソニー・ホンダモビリティ(SHM)が、EV(電気自動車)ブランド「AFEELA(アフィーラ)」の第1弾モデル『AFEELA 1』および第2弾モデルの開発・発売を中止すると発表したのです。

2026年内の米国納車、2027年の日本発売を目前に控えたこのタイミングでの撤退。かつて「日本連合」として世界中の注目を集めたプロジェクトに何が起きたのか。そしてそこから、私たちがビジネスにおいて考えるべきこと、学べることは何か。今回はそんな視点でこのコラムを書いています。最後までお読みいただけたら幸いです。

「移動」の概念を書き換えるはずだった“共通言語”

「AFEELA」は、単なる移動手段としてのクルマではありませんでした。ソニーの持つ圧倒的なエンタテインメント技術と、ホンダが培ってきた車両製造のノウハウを融合させ、「移動空間をクリエイティブなエンタテインメント空間に変える」という壮大なビジョンを掲げていました。

発表当初、CES(世界最大級のテクノロジー見本市)などの国際舞台で語られたメッセージは、まさに「世界共通のワクワク感」を呼び起こすものでした。

  • 車内でPlayStationのゲームを楽しむ
  • AIがドライバーを理解し、パーソナライズされた体験を提供する
  • ソフトウェアが常にアップデートされ、クルマが進化し続ける

これらは、特定の国や文化に依存しない「テクノロジーという共通言語」によって語られ、世界中のファンが「未来の姿」を共有していたのではないでしょうか。しかし、実際にプロダクトを世に出す段階で直面したのは、市場環境の激変という極めてローカルで生々しい現実でもありました。

世界情勢が変わるとき、戦略はどう翻訳されるべきか

今回の開発中止の背景には、ホンダの四輪電動化戦略の抜本的な見直しがあると報じられています。トランプ政権による政策転換(補助金の撤廃や関税の影響)、さらには中国メーカーとの激しい価格競争など、数年前のプロジェクト開始時とは前提となる世界情勢や市場が完全に変わってしまったのです。

ビジネスにおける「翻訳」も、これと全く同じ難しさを抱えています。 どれほど優れた製品やサービスであっても、それを届ける先の状況を無視しては価値が伝わりません。

例えば、

  • 「先進性」という言葉ひとつ取っても、インフラが整った都市部とそうでない地域では意味が変わります。
  • 「環境対応」というメッセージも、政策が180度変われば、ポジティブな訴求からコスト増の要因へと解釈が反転してしまいます。

SHMの決断は、市場が変わったことを冷静に判断した結果と言えるかもしれません。グローバルビジネスにおいては、「何を言うか」以上に、今その市場で「どう受け取られるか」を正確に把握し、戦略をローカライズし続ける柔軟性が求められるのではないでしょうか。


翻訳においても単なる「言葉の置き換え」ではなく「価値の再定義」

以前、別のコラムでもWBCのNetflix配信を例に「コンテンツは翻訳されることが前提の時代になった」という内容をアップさせて頂きました。今回のAFEELAのニュースは、その一歩先、「戦略そのものがグローバルな変化にさらされ続ける時代」を表しているトピックであると思います。

私たち翻訳会社が提供する価値も、単に言語を他の言語に置き換えることではないと思っています。

  • お客様が「何を伝えたいのか」という意図
  • 現地のユーザーが今「何を求めているのか」という時代や地域の特性

この両者を繋ぎ合わせ、最適に「再定義」することも、翻訳を行う上では考慮する時代になっています。 例えば、Webサイトを海外向けに展開する際、「なぜこの製品が、今のあなたたちの社会に必要なのか」というストーリーを考慮し、翻訳に取り入れることで、翻訳先の社会でも受け入れられやすいコンテンツにすることができます。

失敗ではなく「次なる進化」へのプロセスとして

AFEELAのプロジェクト自体は一時停止となりましたが、ソニーとホンダは今後も協議を継続し、新たな方向性を探るとしています。これほど大きな挑戦が残した知見や技術は、形を変えて次のイノベーションに繋がると思います。

私たちカルテモも、お客様の挑戦に寄り添うパートナーでありたいと考えています。 

「世界に打って出たいが、今の市場環境でこのメッセージはどう響くのか?」 「技術的な強みを、文化の異なる相手にどう説明すれば伝わるのか?」

このような翻訳のお悩みにも、カルテモのナレッジを活かした提案をしてまいります。

翻訳や通訳の枠を超えて、お客様の「伝えたい想い」が世界で正しく実を結ぶよう、私たちも共に考え、最適な言葉を選び続けていきます。


田中達大(マーケティング担当)

2020年カルテモ入社。翻訳コーディネーションを4年ほど担当し、現在は通訳・人材事業、営業、マーケティングを担当。前職は旅行会社にて中南米地域を扱う。中南米のほとんどの国を訪れたことが自慢。

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