※こちらの記事は先日投稿した”Navigating the Complexities of Japanese-to-English Translation“の記事の和訳となります

日本語と英語は、構文的、形態学的、そしておそらく最も重要なこととして文化的にまったく異なります。英語を母国語とする私が日本語の勉強を始めたのは大人になってからです。学生時代にヨーロッパの言語を学びましたが、その知識は日本語学習にまったく役立ちませんでした。この2つの言語は別の国の言語どころか、別の星の言語。当時はそんな感覚でした。
だからこそ日英翻訳は魅力的な挑戦でもあります。では、翻訳者はどのような点に頭を悩ませているのでしょうか。プロを困らせる日本語の特徴や特有の表現をいくつか挙げてみます。
- 文脈:日本語の文は文脈を重視する傾向があり、主語や目的語だけでなく、文脈から推測可能な場合は動詞さえも明確に示されないことが珍しくありません。それに対し、英語の文はもっとはっきりしていて、日本語の文では読み手の想像に委ねられがちな主語、目的語、動詞、性別、単数・複数などの情報も省略されないことがほとんどです。そのため、クライアントから提供される背景情報は多ければ多いほど、日英翻訳者から歓迎されます。
- 呼称:呼称にも文化の違いが見られます。日本語のビジネス文書では、名字の後に「~さん」などの敬称(ときには役職名)を付けるのが一般的です。一方、英語の場合、特にフォーマルな文書ではフルネームが好まれる傾向があります。「山田さん」を「Mr. Yamada」、「伊藤さん」を「Mrs. Ito」と訳すと、ぎこちなくなることが多く、堅苦しい印象を与えかねません。こうした違いのため、日英翻訳者はリサーチ能力にも長けています。自然な訳になるようにフルネームや正式な役職名を突き止めようとして、会社のウェブサイトなど、公開されている情報源を隅々までチェックするのは日常茶飯事です。
- 挨拶:使用頻度の高い挨拶表現の中には、翻訳者泣かせの日本語もあります。例えば、友好的な挨拶文としてメールの冒頭で使用されることが多い「お世話になっております」(文字通りに訳すと「I’m grateful for your help」)や、終業時をはじめ、様々な場面でよく使用される「お疲れ様です」は厄介です。「よろしくお願いします」も「I look forward to working with you」などと訳せますが、文脈次第でその訳はいくらでも考えられます。
- 語彙:とはいえ、日英翻訳における最大の困難について考えると、たいていは大きな違いがある語彙に行き着きます。両言語の辞典を照らし合わせたときに、「A=B」の関係が成立することはまずありません。例えば、「実現する」の訳を複数の辞典で調べると「realize」が優勢ですが、大半の文脈で自然と採用されやすいのは「achieve」や「implement」です。「対応する」の訳なら、「respond」、「handle」、「address」、「accommodate」、「support」、「correspond」、「adapt」、「serve」、「cope with」などが考えられます。抽象名詞であれば、権威ある和英辞典には10を超える訳語が候補として掲載されていることもありますが、文脈によってはそのいずれも適さないケースが少なくありません。
日本語から英語(そして英語から日本語)への翻訳はサイエンスであり、真のアートでもあります。簡単とは程遠い作業かもしれませんが、陳腐な言い方をするなら誰かがやらなければならないのです。私個人としては、その誰かが自分であることに喜びを感じています。
株式会社カルテモ 広報部
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